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TERRA 【第2章】第12話 トドス湾へ!

【第2章】

第12話 トドス湾へ!

いろんな生き物たちがそれぞれの思いでアルムたちの到着を待ちわびています。海に落ちてしまったアルムは、マンタの背中に乗り、トドス湾にまっしぐら。そのさなかに予期せぬ出会いがあるようです。

海の守り神、巨大なマンタレイのオブラにいっしょうけんめいしがみついていたアルムでしたが、ひときわ高くジャンプした時に、つかんでいた指が離れてしまいました。ごろごろとオブラの背中をころがると、まっさかさまに海に落ちてしまったのでした。

ばっしゃーん

水しぶきをあげてまたもや海に落っこちたアルムは、あわてて両手両足をばたばたとかきましたが、なんの役にも立ちません。 重い甲らを下にして沈んで行きました。

オブラは、乗客を落としたことに気づかずに、ジャンプをしながら、遠ざかっていってしまいました。

メルク大陸近くの海はかなり浅く、すぐにアルムは海底に届きました。甲らが3分の1くらい砂地に埋まりました。 小さなサカナたちは、突然隕石のように落ちてきた大きなカメに驚いて、逃げて行ってしまいました。
「さて、浅瀬ではあるが、この姿勢は苦しいのお‥どうしたもんかの」

しばらくすると、困っているアルムの近くに一匹のサカナがやってきました。

様子をみるようにまわりを泳ぐと、急にアルムの顔の横に来て、大声で叫びました。
「アルム!アルムじいさんだよね?!どうしてこんなところに??」

アルムは驚いてそのサカナのほうに首を伸ばしました。
「ボクだよ、ルー、トビウオのルーだよ!」
「な、なんと、ルーじゃと?!」
ルーは、両ひれを大きく広げて元気な姿を見せました。
「おー、まさにルーじゃ、こんなところで会えるとは!たしかお前さんはあの満月の晩にニンゲンにとらえられてしまったはずじゃが‥」(ルーがニンゲンにつかまった話は、第1章第1話を見てね)

「ボクだけなんだよ、助かったのは‥ホントに偶然なんだ‥」
そう言って淋しそうにうつむきました。アルムは静かにうなずくだけでした。

「それよりアルムじいさんはこんな海の中にいて大丈夫?なんでこんなところでさかさまになってるの?」
「わしは、仲間たちと島を出て、トドス湾に向かう途中なんじゃよ。いろいろ調べものがあってな。そうじゃ、お前さんの友だちのパオとも一緒に旅をしてるんじゃよ」
「パオ、懐かしいな!一緒に旅してるっていうことは、あいつ飛べるようになったんだね!」
「もちろん、いまでは仲間のリーダーじゃよ。でも嵐にあってはぐれてしまってな。そのあとはマンタレイにここまで運んできてもらったのじゃが、落っこちてしまって‥」
話をさえぎるように、
「待って、そのマンタレイって、もしかしてオブラって名前じゃない?」
「まさにそうじゃよ、知り合いかな?」
「知り合いも何も、あいつにジャンプを教えたのはこのボクだよ。じいさんを落とすなんてとんでもないやつだ!じいさん、ここで待ってて、ボク、オブラを探してくるよ!」
そう言い残すと、ジェット機のように飛んで行ってしまいました。

海底に残されたアルムは、
「やれやれ、このさかさまの体をもとどおりにしてほしかったのじゃがの〜」
と、お腹に日差しを浴びながらぼやくのでした。
ぼやいていてもしかたがありません。手足をじたばたと動かすと、甲らはやわらかい砂に埋まっていきそうです。
「こりゃ、どうしたもんかのう」
今度は首を伸ばしてゆらゆらと動かしてみました。するとちょっとだけ背中が横に動きました。
「お、もっと動かしたら、なんとかなるかもしれんぞ」
首の動きにつれて、ぐらぐらと体全体がゆれ始めました。
「ほっほ、これはうまい具合だわい、この調子、この調子」
逆さまの体が大きく動き始めるにつれて、あたりには砂けむりがまいあがってきました。

***

「黒くてクジラみたいな形をしたこの岩が目印だから‥このあたりのはずなんだけど‥」
マーパとパオ、ハーリーが到着したときには、アルムの姿はありませんでした。

「おい、ハーリー!いないじゃないか、どういうことだよ!お前やっぱりだましたんだな?!」
マーパが大きな口を開いて、かみつこうとしました。頭の上のトゲが赤く光ります。 パオがマーパをさえぎって、
「場所が違うんじゃないか?本当にここだったのかい?」

ハーリーは、何か探し物をしているかのようにあたりをきょろきょろ見回すと、
「あった、これだ!ボクが思ったとおりだったよ!」
「おいこら、いったいどういうことだ!アルムじいさんに何かあったらただじゃおかないんだからな!」
甲らにつかみかかろうとしたマーパに、ハーリーは自信たっぷりに近くの砂地を指さしました。そこには、大きな石をどけたような跡がついていました。

「これはオブラがいたしるしだよ。うん、間違いない。ゾウガメのじいさんは、海の守り神と一緒にトドスに向かっているんだよ、きっと!」
「海の守り神?」
マーパは不思議に思ってたずねました。
「そう、守り神っていうのはこのあたりを守っている大きな大きなマンタレイのことさ。じいさんよりずっと大きいから、乗せて泳ぐことなんかわけないよ!」
マーパとパオは顔を見合わせて、
「間違いないのか? もしそれがホントなら、オイラたちも 今すぐトドス湾に向かわないと!お前も一緒に来い!オイラたちはその守り神を見たことがないんだからな」
「当たり前だよ!オブラが一直線にトドスに向かうとしたら、こっちだよ。早く行こう!」
後ろも見ずに飛び出して行ったハーリーを、みんなも負けずに追いかけます。やっと希望の光が見えてきました。

***

ルーは、アルムから数キロはなれたところでぼんやりと漂っているオブラをみつけて叫びました。
「オブラー!お前何やってるんだ、こんなところで!」
「おう、せんせーい。どうしたーねー、こんなとーころでー?」
相変わらずのんびりと答えました。
「どうしたじゃないよ、お前アルムじいさんと一緒だっただろ」
「そうなーんだよー、でもなーぜか消えてしーまってねー、途中でー」
「消えるなんてことあるわけないだろ。あんたが落としたんだよ!」
「な、なーんと!落とーしたとなー。そーりゃえらーいこっちゃー!」
「これで大事なじいさんがケガでもして旅を続けられなくなったら、お前のせいだからな」
「わ、わかーった。すぐーにもーどろう。せんせーい、場所ーをおーしえてくれー」
ルーがコバンザメのようにオブラのおなかに張りつくと、大急ぎでアルムのもとに引き返しました。

***

「あれはなんだろう」
先頭を泳ぐハーリーが、遠くに立ちのぼる砂けむりを見つけました。少し遅れてついて来たマーパとパオも、不思議そうに顔を見合わせました。
「あ、あそこだけなんで砂が‥また渦巻きかな?」
とハーリー。
「魚たちの大群かも」
とパオ。
「行ってみりゃわかるさ!」
マーパはすぐに泳いで行きました。

あたりはぼんやりとしていてよく見えません。でもすぐそこに何か大きな物がありそうです。マーパがぐるぐると腕をまわして、あたりをおおっていた砂けむりを追い払うと、ぐったりしたアルムの姿が現れました。

「アルムじいさん!」
マーパは大声で叫びながらアルムに抱きつきましたが、アルムは目を閉じたまま何も言いません。
「じいさん、大丈夫?生きてる?ボクだよ、わかる?マーパだよ!」
と声をかけると、ゆっくりと目を開けました。
「おー、やっと来てくれたか、マーパ!」
どうやら首を大きく振り続けていたために、目が回っただけのようです。
「よかった、よかったよ、じいさん‥ほんとによかった‥」
マーパは声をふるわせて、もう一度強くアルムに抱きつきながら言いました。
「ゴメンなさい、オイラが遊んでいたからこんなことになっちゃって‥ほんとうにごめんなさい、わーん!」
あやまっているうちに、とうとう声を上げて泣き始めました。
「もうよい、もうよい。わしはホレ、こうして無事じゃからな」
泣きじゃくるマーパのアタマをぽんぽんとやさしくたたきました。
「それより、早く起き上がらせてくれんかの」

トビウオたちが力を合わせてアルムをいつもの姿勢にもどしたとき、急にあたりが暗くなりました。見上げると黒い影が頭上をおおっています。
「パオ!アルムじいさん!」
影の中から一匹の魚が泳いできました。

目の前に現れたのが、別れ別れになった友だちだとわかったパオは、びっくりしました。
「ルー!まさか、本当にルーなの?信じられない、お化けじゃないよね?」
「お化けがこんなことできるかい?!」
ルーは笑いながら、パオの胸びれとハイタッチをしました。

グァラパ島を旅立ったアルムたちは、恐ろしい嵐ではなればなれになりながらも、こうして無事にめぐり会うことができました。オブラがいれば、もうトドス湾まではあとわずかです。

仲間たちが嬉しそうに笑い合っている姿をながめながら、アルムは、まだ出会えないファンキーのことを思い、遠い空を見上げました。

第二章終わり

第12話道しるべ

地球の大部分を占めている海。
小さな生き物から大きな生き物まで
互いにつながりを持ちながら多くの命が生きている。

海の水は、洗濯機の中でぐるぐる回る水のように
地球の上を絶えず循環し続けている。
そのおかげで季候や気温はバランスが保たれているが
気候変動による海水温度の上昇や海洋汚染
砂浜の埋め立てや浸食、魚の乱獲などによって
直ぐにバランスは崩れてしまい
生態系(生き物たち)にまで影響を与えてしまう。
生き物たちと環境を支えている海の大切さを知ってほしい。

今この海で何が起きているのだろうか。

★調べてみよう
「海の誕生、海と生き物たち」

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